SAIDの原則

SAIDの原則とは、“Specific Adaptation to Imposed Demands”の略で、課された特定の要求に対して身体は適応するというトレーニングの基本法則を示す。つまり、トレーニングによる刺激の内容に応じて、その結果として得られる適応(筋力、柔軟性、神経系、骨格系など)も特定の方向に生じることを意味する。

原則の内容

たとえば、爆発的な力発揮を求めるようなトレーニング(例:ジャンプやスプリント)を繰り返せば、神経系や速筋線維が主に適応する。一方、長時間にわたる軽い負荷の運動を繰り返せば、筋持久力心肺持久力が主に発達する。

このように、どのような負荷、反復、速度、関節可動域、エネルギー供給系が関与するかに応じて、身体はその要求に見合った形で適応を起こす

特異性の原則との違い

特異性の原則SAIDの原則は非常に密接に関係しているが、厳密には次のような違いがある:

観点 特異性の原則 SAIDの原則
概要 トレーニングの内容は目的に特化すべき 適応は課された要求に特異的に生じる
焦点 プログラム設計(どんな刺激を与えるか) 生理学的結果(どう適応が起こるか)
筋力を高めたいなら高重量トレーニングを選ぶ 高重量トレーニングにより神経系と筋繊維が適応する

簡単に言えば、特異性の原則が「どうトレーニングするか」に関する考え方であるのに対し、SAIDの原則は「その結果としてどう適応するか」を説明する法則である

実践上の応用

  • 筋肥大を目指す場合は、中程度の重量・反復回数が適応を最大化する
  • 柔軟性を高めたいなら、可動域を広く使った動作を繰り返す
  • 骨密度の維持には衝撃のある荷重運動が適している
  • パフォーマンス向上には、競技に似た刺激(スピード、リズム、筋活動)が必要

他の原則との関係

SAIDの原則は、特異性の原則過負荷の原則漸進性の原則などの基礎理論とともに、適応を予測・設計するうえで重要な概念である。

まとめ

SAIDの原則は、身体が与えられた特定の刺激に対して、その内容に応じた適応を起こすという原則であり、より細かく・具体的な生理学的変化に着目した考え方である。これを理解することで、目的に沿ったトレーニング戦略が立てやすくなる。