# 母指球筋

**母指球筋**(Thenar muscles)は、手のひらの親指側(母指球部)に位置する筋肉群の総称であり、親指の繊細な動きや力強いグリップ動作に関与する。物をつかむ、つまむ、回すといった日常動作の多くに重要な役割を果たす。

## 構成筋

母指球筋は以下の4つの筋から構成される:

- **短母指外転筋(Abductor pollicis brevis)**  
  親指を手のひらの面と垂直に外側へ開く動作を行う

- **短母指屈筋(Flexor pollicis brevis)**  
  親指の基節を屈曲する筋肉

- **母指対立筋(Opponens pollicis)**  
  親指を他の指に向かって回旋させる「対立運動」を担当

- **母指内転筋(Adductor pollicis)**  
  親指を手のひら側に引き寄せる(内転)

## 機能

- **ピンチ動作**(つまむ動作)に不可欠  
  → [ピンチグリップ](/term/pinch_grip/)の基礎筋群

- **親指の対立運動**により、他の4指と向かい合わせてつかむ能力を生む

- **把持力の補助**として、[クラッシュグリップ](/term/crush_grip/)にも部分的に関与

## トレーニング方法

母指球筋は小さい筋群だが、トレーニングによって機能強化と神経支配の向上が期待できる。

### ラバーバンド・ピンチトレーニング

- 輪ゴムや指トレーナーを使い、親指と他の指で開閉運動を繰り返す

### ピンチグリッププレートホールド

- ウェイトプレートを親指と他の指でつまんで保持する

### セラピュットボール・スクイーズ

- 柔らかいボールを母指球で押す反復運動

### 手指アイソメトリクス

- 親指を各指に順番に強く押し当てて静止する(5秒×各指)

## ストレッチ

- 手のひらを開き、親指を外側に伸ばす
- 反対の手で親指を軽く引きながら手首を背屈させる

## 臨床的意義

- **母指球筋の萎縮**は、正中神経麻痺(例:手根管症候群)で見られる代表的な兆候
- 筋力低下により、つまみ動作や精密作業に支障が出ることがある

## 関連項目

- [ピンチグリップ](/term/pinch_grip/)
- [握力](/term/grip_strength/)
- [手内筋群](/muscle/intrinsic_hand_muscles/)
- [手根管症候群](/term/carpal_tunnel_syndrome/)